2016年度

関西パレスチナ研究会 第3回研究会

概要

  • 日時:2017年3月4日(土)13:00-17:30
  • 会場:京都大学総合研究2号館(旧・工学部 4号館)4階 AA401(リンク先34番の建物)

  • ■プログラム(予定)
  • 報告① 13:00~15:00
     山本健介(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、学振特別研究員DC)
         「オスロ合意体制におけるエルサレム問題の再編過程:
        イスラエル・ヨルダン・パレスチナの三者関係とその内実」

  • 報告② 15:10~17:10
     関口咲子(京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程)
        「ユダヤ教神学校とユダヤ・ミュージアムの歴史的考察:
        「マサダ」と「ホロコースト」の表象を中心に」


  • *報告終了後、懇親会を予定しています。
    *ご参加の際は、資料準備の関係上
     事務局の金城( honeyneypool[at]gmail.com :[at]は@に変えてください)までご連絡ください。

    主催:関西パレスチナ研究会
       http://kansai-palestinestudies.blogspot.jp/
    共催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

報告



2016年度第4回 パレスチナ/イスラエル研究会
国際ワークショップ"The other possibility of Peace"

概要

  • 日時:2017年2月12日(日)14:00-19:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス・東洋文化研究所 3階第一会議室 
        ※当日、会場となる建物の入口は、土日のため自動ドアが停止しています。
         入り口正面右手に備え付けの電話から、内線番号までご連絡ください。
  • 使用言語:英語(通訳なし)
  •       
  • ◆報告1(14:00~16:00)  :ポール・デフィル(Paul Duffill)(シドニー大学客員研究員)
          "Promoting Peace with Justice in Israel-Palestine: The contribution of
          international and local civil society human rights and peacebuilding practice"

  • *デフィル氏はオーストラリアのシドニー大学平和構築学部客員研究員で、ご専門は平和構築学、多文化間コミュニケーション、人権問題と紛争解決などについて活動・研究されています。

  • ◆報告2(16:15~18:15) :イヤース・サリーム(Iyas Salim)(同志社大学助手)
          "People-to-People Cooperation: Muslim Civil Society in Turkey and its Role in
           Transnational Humanitarian & Development Work in Palestine"

  • *サリーム氏は同志社大学グローバル・スタディーズ研究科助手で、ご専門はトルコなど中東イスラーム世界における市民社会と、そのパレスチナにおける役割を、トランスナショナルな人道支援・開発の分野から研究されています。

  • ◆総合討論(18:15~19:00)

  • In English

  • 主催:東京外国語大学アジア・アフリカ研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)
    共催:東京大学東洋文化研究所班研究「中東の社会変容と思想運動」

報告

関西パレスチナ研究会 第2回研究会

概要

  • 日時:2017年1月28日(土)13:00-18:00
  • 会場:立命館大学いばらきキャンパス B棟4階研究室1

  • ■プログラム(予定)
  • 報告① 13:00~15:00
  •      佐藤愛(京都大学人間・環境学研究科修士課程)
          「ディアスポラのパレスチナ人と芸術表象――アメリカ合衆国の移民二世を例に」(仮)

  • 報告② 15:10~17:10
  •      役重善洋
          「エルサレム世界宣教会議(1928年)とグローバル植民地主義」


  • 主催:関西パレスチナ研究会
    共催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

報告



2016年度第3回 パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2016年11月12日(土)14:00-19:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス・東洋文化研究所 3階第一会議室

  • ◆報告1:児玉恵美(日本女子大学文学研究科史学専攻博士課程前期)
          「レバノンのパレスチナ解放運動(1969年-1982年):難民キャンプにおける動員と参加から」

  • ◆報告2:保井啓志(東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程)
          「ピンクウォッシング: ナショナリズムとセクシュアリティ」


  • 主催:東京外国語大学アジア・アフリカ研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)
    共催:東京大学東洋文化研究所班研究「中東の社会変容と思想運動」

報告

報告1:児玉恵美(日本女子大学文学研究科史学専攻博士課程前期)
      「レバノンのパレスチナ解放運動(1969年-1982年):難民キャンプにおける動員と
      参加から」


 児玉氏の報告は、1969 年~1982 年のレバノンにおけるパレスチナ解放運動を、運動のアクターである指導部、参加者としてのパレスチナ 難民に着目し、 「動員と参加」の動態的視点から考察する興味深いものであった。
 まず、既存のパレスチナ解放運動研究を解放運動史とオーラルヒストリーに分類し、解放運動史では指導部による「難民の動員」に焦点を当てた研究 がないこと、オーラルヒストリー研究では祖国を追放され難民となった農民の苦難 、武装闘争を通じて自らのアイデンティティの回復への研究はあるも のの、1970 年代以降の動員状況と人々の解放運動への視点については再検討の余地があることが提起された。
 分析では、1)解放運動指導者が難民キャンプをどのように考え、動員をしてきたのかをPLO(パレスチナ解放機構)、DFLP(パレスチナ解放民主 戦線)、PELP(パレスチナ解放人民戦線)、PNC(パレスチナ民族評議会)の政治文書分析から、2)難民キャンプの離散パレスチナ人が解放運動をど のよう見ていたのかを難民キャンプ内で教師であったハッシャーン 、詩人のマンスーラ、難民のトゥルキーの記述から考察している。
 指導部の政治文書分析から、 動員が難民に向けたものであったにも拘わらず動員ツールとしてマルクス主義的言説が使用され、ヨルダン川西岸地区の 主権と領有権を主張するヨルダン・ハーシム王国への闘争 の原動力としてパレスチナ難民動員が行われた側面があること、他方、難民キャンプの人々の 記述考察からは、パレスチナ難民が解放運動を通してパレスチナ人のアイデンティティを獲得していくのと同時に、全ての難民が運動に身を投じたので はなく、ハッシャーンのように解放運動の教育蔑視に反発し、運動を批判的に捉えて参加しない人々がいたことも明らかになった。
 質疑応答では、パレスチナ解放運動に参加した人々とイデオロギーの繋がり、オーラルヒストリーの位置づけ、人々の語りをどのように歴史的文脈化 と結びつけられるかなど、非常に充実した議論が交わされた。

(文責:戸澤典子 東京大学大学院 修士課程)

報告2:保井啓志(東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程)
      「ピンクウォッシング: ナショナリズムとセクシュアリティ」


 保井氏の報告は、ホモノーマティビティやホモナショナリズムの言説を基に、ピンクウォッシングを検討したものであった。ピンクウォッシングとは、対LGBT政策を通したイスラエル政府の対外イメージ操作を批判的に捉える用語である。これによってイスラエルは、パレスチナ人抑圧者から性的少数者に寛容な政府へと自らの印象を操作する。報告の前半では、フェミニズムおよびクィア理論に関する理論的背景を述べる中で、ホモノーマティビティとホモナショナリズムの説明がなされた。後半では、イスラエル国内における性的少数者をめぐる運動やそれに関する政府の宣伝など、具体例からの検討が行われた。以上のような状況をふまえ、報告の最後では「リベラル」という言葉の持つ効果が、国内外ではねじれていることが指摘された。すなわち、「リベラル」は、イスラエル国内ではユダヤ教からの世俗を意味する一方で、国際的な宣伝を行う際には、イスラムからの世俗を想起させるものに変わるという。質疑では、報告の主旨をより明確化する必要が指摘された。それに加え、報告者がイスラムをいかに定義するのか、イスラエルのイメージ戦略をどのように評価するのかなど多くの質問が上がり、非常に活発な議論が交わされた。

(文責:臼杵悠 一橋大学大学院 博士後期課程)

関西パレスチナ研究会 第1回研究会

概要

  • 日時:2016年11月5日(土)13:00-18:00
  • 会場:キャンパスプラザ京都 京都大学サテライト講習室(6階・第8講習室

  • ■プログラム(予定)
  • 報告① 13:00~15:00
  •      吉村季利子(大阪大学大学院国際公共政策研究科招聘研究員)
          「イスラエルの市民社会と解決困難な紛争」

  • 報告② 15:10~17:10
  •      金城美幸(日本学術振興会特別研究員RPD)
          「村民たちの口述語りから見たデイル・ヤーシーン村」


  • 主催:関西パレスチナ研究会
    共催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

報告



2016年度第2回 パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2016年7月31日(日)13:00-19:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス・東洋文化研究所 3階第一会議室

  • ◆報告1:鈴木隆洋(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程)
          「『ホームランド(民族的祖国)』=隔離のアッサンブラージュ:形式において民族国家的、
         内容において植民地主義的」

  • ◆報告2:塩塚祐太(対パレスチナ日本政府代表事務所(在ラーマッラー)元草の根・人間の安全保障
         無償資金協力調整員(2012-2015)。2016年6月からAAR Japan 難民を助ける会の
         プログラム調整員)
          「パレスチナにおける国際援助概観:援助のこれまでの経過と日本の草の根無償資金協力の
         実践において」


  • 主催:東京外国語大学アジア・アフリカ研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)
    共催:東京大学東洋文化研究所班研究「中東の社会変容と思想運動」

報告

報告1:鈴木隆洋(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程)
      「民族的祖国=隔離のアッサンブラージュ−−形式において民族国家的、
     内容において植民主義的−−」


 鈴木隆洋氏の報告は、しばしば比較されるイスラエルによるパレスチナ占領と南アフリカのアパルトヘイトが単なるアナロジーではなく、多くの先住民統治政策の点で同一のものであったことを明らかにしようと試みるものである。たとえば、両国の先住民統治政策は「人種」に規定された法的地位に基づいたものであった。報告では、分析概念として「監視・隔離・支配のアッサンブラージュ」および「間接統治」が提示された。両国の比較は、パレスチナ問題の今後の方策を考える上で示唆に富むものであった。
 報告者は、ヨルダン川西岸地区およびガザ地区におけるパレスチナ自治政府(PA)は、そのシステムにおいて南アフリカにおけるバンツースタン政府に他ならないと考えている。2国のうち、南アフリカではそのシステムが崩壊したのに対し、パレスチナではそれが強化された。この要因として報告では、政治的な要因(解放闘争の路線)と経済的要因(産業構成)の相違が指摘された。
 質疑応答では、当該2国の共通性が「アナロジーを超えて」いるのかどうかという点、および「監視・隔離・支配のアッサンブラージュ」という分析概念の有効性についての議論がなされた。また、過去の帝国支配(イギリスによるインド支配)とは切り離してイスラエルと南アフリカを比較することの問題性や、同時代的な外部からの影響、さらには独立以前に帝国がこの地域に関わった動機などを、分析に入れる必要性が指摘された。

(文責:棚田丸輝 日本大学大学院)

報告2:塩塚祐太(対パレスチナ日本政府代表事務所(在ラーマッラー)元草の根・
     人間の安全保障無償資金協力調整員(2012-2015)。
     2016年6月からAAR Japan 難民を助ける会のプログラム調整員)
    「パレスチナにおける国際援助概観:援助のこれまでの経過と日本の草の根無償資金協力
    の実践において


 塩塚氏の報告は、1993年以降のパレスチナへの国際援助について情報を整理するとともに、自身が関与した「草の根・人間の安全保障無償資金協力」を中心に、日本の対パレスチナ援助について分析を加えるものであった。
国際援助について塩塚氏は、①援助構造の発展期(1993~2000年)、②緊急援助期(2000~2006年)、③パレスチナ内部の分裂期(2006 年以降)という3つの時期区分を設定し、その特徴を提示した。具体的には、パレスチナ自治政府への欧米からの経済援助が発展し、援助構造が形成された点(①)、それまでの援助構造が破綻し、人道支援を中心とした直接的な支援へと構造が変容した点(②)、ハマースを避ける形での援助の形が模索されている点(③)が挙げられた。
さらに、日本の援助については、ドナー国として多額の支援金を拠出している事実が明示された。日本の支援金の拠出ルートとして、国際組織・JICA・自治政府への直接支援・NGO への支援の4つを示し、自身が関与した「草の根・人間の安全保障無償資金協力」をNGOへの支援枠組みの1つとして取り上げた。
こうしたプロジェクトの問題点として、国際政治上の動向やドナー国の意図によって計画が左右されてしまう点や、インフラへの投資が中心になっていること、援助スキームの厳格さが現地のNGOに必ずしも好まれないことが指摘された。同時に、支援のための物資にイスラエル製品が用いられる場合があることも、問題として提起された。
質疑では、パレスチナへの援助のあり方が占領状態の固定化に繋がる恐れや、ハマース関係組織を援助対象から完全に排除できているのかという疑問が挙げられた。また、「中立性」や「非政治性」を求める援助の問題、援助とアメリカの外交戦略上の関係、日本の援助体制における主体性の欠如といった幅広い議論がなされた。

(文責 澤口右樹 東京大学大学院修士課程)

2016年度第1回 パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2016年6月26日(日)13:00-18:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス・東洋文化研究所 3階第一会議室

  • ◆報告1:錦田愛子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 准教授)
          「ヨーロッパをめざす中東難民―レバノン・シリアのパレスチナ難民の足取りを追って―」

  • ◆報告2:臼杵悠(一橋大学経済学研究科博士課程)
          「ヨルダン経済における移民/難民(仮)」


  • 主催:東京外国語大学アジア・アフリカ研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)
    共催:東京大学東洋文化研究所班研究「中東の社会変容と思想運動」

報告

報告1:錦田愛子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 准教授)
      「ヨーロッパをめざす中東難民―レバノン・シリアのパレスチナ難民の足取りを追って―」


  シリア内戦の激化及びダーイシュ(IS)の台頭によりシリア・イラク難民が大量発生し、欧州を目指して密航する現象が社会的・人道的問題となっている中で、錦田愛子氏は自身の報告テーマにおいて「シリア難民」の中に含まれるパレスチナ難民を研究対象として定めた。
  彼らが何故居住条件(気候・言語)あるいは衣食住環境などの文化面において近隣アラブ諸国とは異なる欧州を目指すのか、そうした疑問を明らかにしていく上で中東出身のアラブ系移民を移民/難民として受け入れている中東(ヨルダン)と欧州(スウェーデン)の2カ国を調査地として比較研究を試みた。
  なかでもアラブ系移民(特にシリア、イラク、パレスチナ出身者)に対して世論調査及び聞き取り調査を行ない、彼らの移動の動機、そして現住地に対する生活満足度や政治的意見などについて着目していった。
  錦田氏は従来の難民に対する先行研究を批判し、新たに移民/難民といった人間の国際移動に関する研究において、「移民/難民受入国」からの視点ではなく、移動主体である彼ら並びに「移民/難民送出国」の視点に立った研究の意義を指摘した。
  そして「シリア人難民」にのみ焦点を合わせ、短期的かつ一過性の情報収集に終始したものではなく、より長期的な視野を含めた「アラブ系移民/難民」という視点や、移動に対する移民/難民自身の意識に着目した研究を展開していくことの必要性を主張した。
  また、それらを自身の研究の中に反映させるために、レバノン、スウェーデンに居住するパレスチナ難民に対してアラビア語での聞き取り調査を行ない、そこから様々な動機の存在などについて明らかにしていった。
  最後に、まとめとしてパレスチナ難民が居住地レバノンにおいて国民統合や経済的自立が極めて困難に近い法的・政治的環境に置かれている事実、また、その状況から抜け出す上で、リスクを冒してまで欧州に密航し、その中で政治的に親パレスチナかつ「積極的外交政策」の下で移民/難民受入に寛容的なスウェーデンに移住し、そこで「スウェーデン人」として経済的支援及び語学支援などの面において恩恵にあずかるという動機の存在が確認された。
  なお、安定した第三国への移住を果たしたものの、第一世代にとってはこれをパレスチナへの帰還に勝るものではないと考えているが、それ以降の世代、とりわけパレスチナを直接知らないそれ以降の世代にとっては移住先の国を「自分の国」とみなす場合が見られ、このことからパレスチナ、レバノン、スウェーデンという出身・居住国、地域に対するパレスチナ難民の意識において一種のジェネレーション・ギャップが存在することが示唆されている。
  質疑では、中東難民の欧州密航の裏で暗躍するブローカーの存在や、スウェーデンの「積極的外交政策」などについての議論や応答があり、非常に活発な議論が展開された。

(文責:田澤セバスチャーノ茂 上智大学大学院)

報告2:臼杵悠(一橋大学経済学研究科博士課程)
      「人口センサスに見るヨルダン社会の変容――移動する人々に着目して――」


 臼杵氏の報告は、ヨルダンにおける移動する人々に着目し、過去6回におよびヨルダンにおいて実施された人口センサスを用いて、ヨルダン国内における経済およびセンサスの対象とされる調査項目について考察するものであった。
 本報告では過去に実施された調査のうち、基礎となった1961年から、まだデータが公表されていない直近の2015年に行われたセンサス以前までの、計4回のセンサスを対象とし、考察が行われた。これらのセンサスの中で、ヨルダンにおいて人の移動が大きな影響を与えてきたことを考慮し、ヨルダンにおける人口の流出入に着目したうえで、以下の3つのグループに分けて考察がなされた。
 1つ目は帰還する人々であり、1990年の湾岸危機によって湾岸諸国からヨルダンへ帰還した出稼ぎ労働者を主に指す。彼らに対しては経済関係の調査項目が多く、ヨルダン政府が経済的な面から彼らの存在を重視していたことが指摘された。
 2つ目は国外に出た人々である。産業が少ないヨルダンにとって、海外からの送金は国家経済を支えるうえで大きな基盤となっている。また、高学歴層の国外移住による頭脳流出が問題視されている点から、センサスにおいてもそうした国外への人の移動が重視されていることが指摘された。
 そして3つ目のヨルダン国籍のパレスチナ人に関しては、ヨルダン政府は詳細なデータを公開しておらず、彼らの存在は「語られない移動」として扱われていることが指摘された。
これらの人々に対する調査を考察して行く中で、「語られる移動」と「語られない移動」があることが明らかにされた。ヨルダン政府はパレスチナ問題に関わる移動に関しては公式のデータを公開していないが、その一方でパレスチナ暫定自治区から移動してきたヨルダン国籍を持たないパレスチナ人に対しては外国人として調査の対象となっていることから、ヨルダンにおけるパレスチナ問題の位置づけには問題となる事象の背景によって差異が生じることが指摘された。
 質疑では、調査の方法に関して、委任統治時代のイギリスによる調査方法を踏襲しているのではないかという指摘がなされた。また、実際の調査方法に関する質問や、具体的な調査項目に対する指摘や考察が活発に行われた。

(文責:阿部光太郎 東京外国語大学 国際社会学部)