2017年度

国際ワークショップ "Jews and the Center/Margin of the Contemporary Society"

概要

  • 日時:2018年1月30日(火)14:00-18:30
  • 会場:東京大学本郷キャンパス・東洋文化研究所 3階第一会議室
      最寄駅:東京メトロ丸ノ内線/都営大江戸線(4番出口) 本郷三丁目駅
      東大・懐徳門から入って、緑の小道を抜けた右手、正面玄関に唐獅子像のある建物。

  • ◆使用言語:英語(通訳なし)

  • ◆報告1:14:00-15:30
     シーナ・アーノルド(Sina Arnold)フンボルト大学移民統合研究所研究員
     Between Antisemitism and Racism: Syrian Refugees’ attitudes towards Jews,
     the Holocaust and the Middle East Conflict in Germany.
     (反セム主義と人種主義の間:ドイツにおけるシリア難民とそのユダヤ人、ホロコースト、
     中東紛争に対する関わり)

  • *アーノルド氏は、アメリカおよびヨーロッパ社会における反セム主義と、ドイツのイスラーム教徒を中心とした移民受け入れに関する研究がご専門です。
    https://www.bim.hu-berlin.de/en/persons/dr-sina-arnold/

  • ◆報告2:15:45-17:00
     澤口右樹 東京大学大学院 総合文化研究科地域文化研究専攻
     「人間の安全保障」プログラム修士課程
     Women and the Military in Contemporary Israel: Through Narratives of Women’s
       Military Experiences
     (現代イスラエルにおける女性と軍隊:女性の軍隊経験の語りから)

  • 総合討論(17:00-18:30)

  • 主催:科研費国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
       課題番号16KK0050(研究代表者:錦田愛子)
    共催:東京大学東洋文化研究所班研究「中東の社会変容と思想運動」
    共催:東京外国語大学アジア・アフリカ研究所 中東イスラーム研究拠点
    (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)


  • ■Workshop "Jews and the Center/Margin of the Contemporary Society"
  • ■Date: 30 January, 2018, Tue. 14:00~18:30
  • ■Venue: Conference Room No.1, 3rd Floor,
  •   Institute for Advanced Studies on Asia, the University of Tokyo
  • ◆Languate: Enlgish

  • ◆Program
  • 14:00-15:30 Session(1) Sina Arnold
    Title: Between Antisemitism and Racism: Syrian Refugees’ attitudes towards Jews, the Holocaust and the Middle East Conflict in Germany.

  • Talk (30min), Discussion (60min)

  • Sina Arnold is Post-Doctoral Researcher/ Scientific Managing Director of BIM (Berliner Institut für empirische Integrations-und Migrationsforschung), Humboldt-Universität zu Berlin. She is also a member of the Department "Integration, Social Networks and Cultural Lifestyles"in BIM. Her research topics include theories of antisemitism, antisemitism in social movements and migrant communities; Muslims in Germany, anti-Muslim racism; comparative research on prejudice; migration, digitality and logistics.
    https://www.bim.hu-berlin.de/en/persons/dr-sina-arnold/

  • 15:30-15:45 Tea Break

  • 15:45-17:00 Session(2)  Yuki Sawaguchi(Master’s course of Graduate Program on Human
                 Security,Department of Area Studies at Graduate School of Arts
                 and Sciences,The University of Tokyo)
    Title: Women and the Military in Contemporary Israel: Through Narratives of Women’s Military Experiences

  • Talk (30min), Discussion (45min)

  • 17:00-18:30 General Discussion

報告

関西パレスチナ研究会 2017年度第3回研究会

概要

  • 日時:2018年1月27日(土)13:00-18:00
  • 会場:京都大学総合研究2号館(旧・工学部 4号館)4階 AA401(34番の建物)
     

  • ◆研究報告1:13:00~15:00
         鴨志田聡子(かもしだ・さとこ)
         (東京大学大学院人文社会系研究科研究員、東京外国語大学・関東学院大学非常勤講師)
         タイトル:「建国が生んだ「ディアスポラ」:エジプトのユダヤ人の場合」

  • ◆研究報告2:15:10~17:10
         高橋宗瑠(たかはし・そうる)
         (立教大学講師、元国連人権高等弁務官事務所パレスチナ副代表)
         タイトル:「国連とパレスチナの人権保護」


  • *ご参加の方は、資料準備の関係上
     事務局の金城( honeyneypool[at]gmail.com :[at]は@に変えて下さい)までご連絡下さい。

    ■主催:関西パレスチナ研究会(http://kansai-palestinestudies.blogspot.jp/)
    ■共催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

報告


2017年度第5回 パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2017年12月10日(日)14:00-17:30
  • 会場:東京大学本郷キャンパス・東洋文化研究所 3階第一会議室
      最寄駅:東京メトロ丸ノ内線/都営大江戸線(4番出口) 本郷三丁目駅
      東大・懐徳門から入って、緑の小道を抜けた右手、正面玄関に唐獅子像のある建物。

  • ◆報告1:鈴木啓之(日本学術振興会特別研究員PD[日本女子大学])
          「長い導火線:蜂起の系譜からインティファーダを問い直す」

  • ◆報告2:南部真喜子(東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程)
          「現地調査報告:現象としてのインティファーダを再考する」

  • ◆コメンテータ:立山良司氏(防衛大学校名誉教授)


  • 主催:東京外国語大学アジア・アフリカ研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)
    共催:東京大学東洋文化研究所班研究「中東の社会変容と思想運動」

報告

報告2:鈴木啓之(日本学術振興会特別研究員PD[日本女子大学])
     
「長い導火線:蜂起の系譜からインティファーダを問い直す」

 鈴木氏は、まず英国委任統治期の政治運動に触れた後、特に報告者が専門とする、1987年のインティファーダとそれ以前の20年間(1967年の占領開始以降)の関係について議論した。報告によれば、1987年のインティファーダにおいて、匿名化(組織ベースでの政治声明の発信)、運動化(意見書ではなく、実践的な行動の呼びかけ)、脱公化(新聞メディアではなく、ファックスによる伝達、印刷所での文書発行)といった新たな現象が生じたとされる。そして、そうした変化は、著名な政治指導者に対する追放といったイスラエルの政策に対する対応として生じたものであると説明された。
 さらに、その上で、鈴木氏は、1987年以降の政治運動における展開との差違を念頭に置きつつ、1987年の蜂起では、被占領地外で活動していたPLOと占領下の民衆が「独立国家建設」という目標を共有し、また、諸政治勢力の間での対立関係が解消されたことで、広範で持続的な運動が可能になったと指摘した。このような点は、2000年のアル=アクサー・インティファーダやそれ以降の政治状況が、党派間の調整を欠いた分断の状態にあることと対照的である。これらの指摘から、「インティファーダ」が神話的な意味合いを帯びた用語、スローガンとして用いられ、再三にわたりその再開が宣言される現状がある一方で、1987年の蜂起のような運動が再発生は現時点では想定しづらいと指摘し、「アラブの春」を経た、新たな形での民衆運動の可能性を示唆した。
 立山良司氏のコメントや討論においては、インティファーダとメディアの関係(世界への発信や運動における情報伝達など)が広く議論されたほか、現代的展開との関係では、パレスチナ人の民衆蜂起における異議申し立て対象やその内容的な変化といった論点で討論が行われた。鈴木氏の報告は、民衆蜂起における活動手法から、運動の目標やそれらを取り巻く政治環境に至るまで様々な論点を提示するものであったため、会場の参加者からも各々の関心に引きつけた様々な質問が出され、有意義な議論が行われた。

文責:山本健介(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)


報告2:南部真喜子(東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程)
     
「現地調査報告:現象としてのインティファーダを再考する」

 南部氏の報告は、現在のパレスチナでインティファーダがどのように記録され、捉えられているのかについて、現地での調査を踏まえて報告するものであった。報告では調査テーマに沿い、主に囚人の表象に関する問題を扱った。すなわち、囚人が現代のパレスチナ社会でどう認識されているか、という点である。
 パレスチナ社会においては投獄そのものが一種の通過儀礼となっている中で、囚人が英雄として神格化される傾向にある。そのため、第一次インティファーダ期に投獄された経験を持つパレスチナ人の中には、出所後もつきまとう「英雄の理想化」に悩む人もいるという。また、第一次インティファーダの記憶を若い世代に継承しようという文化活動も行われている。しかしながら、囚人の連帯デモに集まりにくいなど若者の関心は薄まっている一方で、未成年者の逮捕数自体は増加しているという。パレスチナ自治政府とイスラエル当局との治安協力に対する反対の声も大きくなっており、世代を越えた社会の一体性の欠如が大きな問題となっている。そのような中での「英雄像」の役割が投獄経験者および社会にとってもどのような役割を果たして行くのか、が今後の研究課題として示された。
 参加者からは逮捕および投獄など用語の使い方についての質問や、調査対象はどの地域に居住する人か、すなわち、東エルサレムかヨルダン川西岸地区かという確認が行われた。また、未成年が逮捕された場合についての処遇やその後の社会での位置づけについての質問も聞かれた。

(文責:臼杵悠 一橋大学大学院 博士後期課程)

国際ワークショップ"Health and Peace of Palestinians"

概要

  • 日時:2017年11月27日(月)13:30-16:30
  • 会場:東京大学本郷キャンパス・東洋文化研究所 3階第一会議室
      最寄駅:東京メトロ丸ノ内線/都営大江戸線(4番出口) 本郷三丁目駅
      東大・懐徳門から入って、緑の小道を抜けた右手、正面玄関に唐獅子像のある建物。

  • ◆モデレーター 清田明宏 (局長 UNRWA保健局)

  • ◆講演者 リタ・ジアカマン(Rita Giacaman)
      (所長・教授、地域・公衆衛生 研究所ビルゼイト大学、パレスチナ)

  • ■プログラム
       開催趣旨(13:30~13:40)
        講演(13:40~14:10)
        講演タイトル:"Political Determination of Health -A case of Palestinians-"
        講演者:リタ・ジアカマン(Rita Giacaman)(ビルゼイト大学、パレスチナ)

  • *リタ・ジアカマン氏は、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区のビルゼイト大学地 域保健・公衆衛生研究所の教授で所長です。また、同研究所の創設者でもありま す。パレスチナにおける保健分野の研究の第一人者であり、現在は、社会的心理 的な健康状態に関しての計測方法の開発や、継続する紛争下での若者がレジリエ ンス力や抵抗力をつけるための有効な介入方法に関しての研究等に取り組んでお られます。 http://icph.birzeit.edu/about/faculty-staff/rita-giacaman

    論文:
    http://icph.birzeit.edu/research/publications

    質疑応答(14:10~14:45)
    休憩  (14:45~15:00)
    総合討論(15:00~16:30)


  • 主催:「慢性紛争下における栄養問題の二重負担:克服の鍵としてのヘルスリテラシー」研究班
       JSPS科研費16KT0039
    共催:東京外国語大学アジア・アフリカ研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)
    共催:東京大学東洋文化研究所班研究「中東の社会変容と思想運動」

報告

2017年度第3回 パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2017年11月11日(土)14:00-17:30
  • 会場:東京大学本郷キャンパス・東洋文化研究所 3階第一会議室

  • ◆報告1:武田祥英(千葉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程単位取得退学)
          「バルフォア宣言の成立と政策化のプロセス」

  • ◆報告2:赤川尚平(慶應義塾大学法学研究科政治学専攻博士後期課程)
          「イギリスのイスラーム政策からの再検討」

  • ◆報告3:臼杵陽(日本女子大学文学部史学科教授)
          「現地パレスチナでどう受けとめられたか」


  • 主催:東京外国語大学アジア・アフリカ研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)
    共催:東京大学東洋文化研究所班研究「中東の社会変容と思想運動」

報告

武田祥英(千葉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程単位取得退学)
     
「バルフォア宣言の成立と政策化のプロセス」

 武田報告は、バルフォア宣言の背景となる第一次大戦期の英国の対中東政策を検証した。とりわけ、宣言が成立した要因や政策化過程において、英国政府内にも多様な意見決定があったことを示し、帝国史の流れのなかで宣言がいかに位置づけられるかを検討した。
 宣言に先立ち、英国政府によるパレスチナ確保を決定づけたのは、1915年のド・ブンセン委員会だったと言われている。確保案には当初、英国政府内でも相違があったが、地政学的関心からハイファを確保しようと積極的な働きかけを行ったインド省や石油担当らの資料から、政府内で合意が形成されていく過程が示された。当時の英国の対中東政策は、海軍力の維持や石油利用が拡大する戦後世界で影響力を行使する狙いから、同地域における石油資源の独占が最優先課題になりつつあったことが背景にある。
 他方で、その統治手法については、ユダヤ人のパレスチナ入植を利用することで同地域への安価で安定的な政策を図ろうとする提唱が、政府内でも一定の支持を得ていた。そのような中、1917年6月にフランス外相カンボンがユダヤ人の復興を勧奨する手紙を出したことで、イギリス外相バルフォアも何らかの宣言を出すべきだという流れが生まれた。当時、パレスチナに対する重要性の認識は英国政府内でも相違があり、必ずしも英国単独で統治する必要性は重視されていなかった。だが同年10月には、英国政府内で宣言に対する賛否案が集約され、11月2日に宣言が公布された。
 これらのことから、バルフォア宣言は、石油資源確保を見据えた同地域の支配を含む、戦後世界を再規定するための帝国主義政策の文脈のなかで、現地への影響力を確保しておきたい英国が暫定的に出した側面が大きいと報告者は解釈した。
 本報告ではバルフォア宣言に至るまでの英国政府内の動向が、帝国史の流れに沿って詳細に提示されたが、質疑では宣言の起草過程や成立に誰が、どのように関わっていたのかがより詳しく分かればよかったとのコメントもあがった。

(文責:南部真喜子 東京外国語大学大学院総合国際学研究科 博士後期課程)

報告2:赤川尚平(慶應義塾大学大学院法学研究科 後期博士課程)
     
「イギリスのイスラーム政策からの再検討」

 赤川氏の報告は、バルフォア宣言を中心とする所謂「三枚舌外交」の政策決定過程を、イギリスによるイスラーム認識、とりわけ第一次世界大戦前から継続してきたパン・イスラーム主義への対応という観点から読み直すというものであった。 先行研究としては、①イギリスの対中東・パレスチナ政策研究、②パン・イスラーム主義研究、③カリフ論研究が挙げられた。赤川氏は各々が個別に研究されてきたことを指摘したうえで、イスラーム認識と対中東政策という2つの文脈の接続を試み、これによって大戦期のイギリスの中東政策の底流のひとつを浮かび上がらせることが可能になると提唱し、この立場から議論が展開された。
 まず、19世紀におけるパン・イスラーム主義の勃興は、イスラーム世界の精神的連帯という幻想を生み、イギリスはそうした認識を通じて中東政策を構築しようとていたことについて議論がなされた。すなわちイギリスは、オスマン帝国崩壊後における地域秩序の正当性を担保するものとして、イスラームとその精神的指導者としてのカリフに期待感を抱いていた。しかし結果的には、イギリスの本国・カイロ・インド政府間で、そしてムスリム間でも思惑の齟齬が表面化した。これによりイギリスにとっては当初の期待が幻想にすぎないことが判明すると、次第にイスラーム世界への関与を弱めていくこととなったのである。バルフォア宣言はというと、こうしてイギリスの政策から「イスラーム政策」としての性格が失われつつあったこの時期に、異なる文脈で生じた必要に対応する中で形成されたのであり、いわば「浮いた」存在であることが理解できると指摘した。加えて、バルフォア宣言をはじめとする「三枚舌外交」は、むしろイギリス内部が一枚岩ではなかったことを背景に生じたという示唆もなされた。
 質疑での中心的議題としては、赤川氏の報告を含む、今回の3つの報告をどう位置付けて考えるか、といったものが目立った。とりわけイギリス史という視点から見た武田氏と赤川氏による報告は相補的なものとして捉えられるのかといった質問については、三枚舌外交においてバルフォア宣言が果たした役割の重要性について指摘がなされるなど、活発な議論が行われた。

(文責:ハディ ハーニ 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 後期博士課程)

報告3:臼杵陽(日本女子大学文学部史学科教授)
     
「現地パレスチナでどう受け止められたか」

 本報告では主として、バルフォア宣言内の文言の変遷を検討し、同宣言がパレスチナに与えた影響が議論された。
 まず、起草段階で現れた5つの草稿のなかで変化した文言が検討されたが、ここからは舞台裏にあった閣僚たちの多様な思惑と、それを最終的には覆い隠す文言を採用する「老練さ」が示された。報告で特に重視されたのは、起草の途中段階で挿入された「パレスチナに存在する非ユダヤ人諸コミュニティ」 についての言及箇所である。この箇所は一見、パレスチナの先住者の権利を保証する内容に見えるが、それは結果的にパレスチナ・アラブ社会に分断を埋め込むものだったとされた。つまり、従来パレスチナのユダヤ教徒はアラビア語を話すパレスチナ・アラブ人の一部だったのだが、同宣言ではパレスチナにおける「ユダヤ人」と「非ユダヤ人」というカテゴリーが設定されたため、パレスチナ・アラブ人からアラビア語話者であるユダヤ教徒を差し引いた「アラブ人」という発想が生まれたのである。
 臼杵氏はこの点を、板垣雄三氏によるヨーロッパ的ユダヤ人問題のパレスチナへの押しつけだという議論と重ねつつ説明した。さらに、これは同宣言が現地にもたらした影響だったと同時に、パレスチナ・アラブ人の側も分断を意識せぬまま引き継いでしまった点が悲劇だとされた。そしてこの悲劇は、第1次世界大戦後の「民族」を単位とした分断という文脈(ギリシャ・トルコ、インド・パキスタンの分断など)に位置づける必要があるという広いパースペクティブが示されて報告が締めくくられた。
 参加者からは、分断はどの程度意図的に生み出されたのか、分断をもたらす英の政策が現地で理解されるようになったのはいつかなどの質問が出た。また、パレスチナ・アラブ人の側からユダヤ教徒を括り出した例として言及されたムスリム・クリスチャン連合については、むしろ十字軍との重なりをほのめかした英アレンビー将軍の振る舞いに対抗した動きだという指摘があった。さらに、ユダヤ教徒との隣人関係が歴史的にあったパレスチナ・アラブ社会において、宣言中の「ユダヤ人の民族的郷土」とはいかなるものとして理解されたのか、宣言は委任統治下のパレスチナ・アラブ人の民族運動における「国家」の想像力にも影響したのではないか、との指摘も出た。

(文責:金城美幸・日本学術振興会特別研究員RPD)

2017年度第2回 関西パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2017年10月7日(土) 13:00~18:00
  • 会場:立命館大学大阪いばらきキャンパス B棟4階研究室1

  • ■プログラム
    13:00~15:00:研究報告
               田浪亜央江 (広島市立大学国際学部)
                「オスマン末期パレスチナ人の旅と望郷 ハリール・サカーキーニー日記を
                中心に」(日本語での報告)     

  • 15:10~17:10:調査報告
               イヤス・サリーム Iyas Salim(同志社大学高等研究教育機構)
               "Second-Chance Education, The Case of Palestine: Education
                 Under Occupation"(英語での報告、通訳なし)


    ■主催:関西パレスチナ研究会
       (http://kansai-palestinestudies.blogspot.jp/)
    ■共催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
        (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

報告

「パレスチナ占領50年」企画連続国際シンポジウム

概要

  • |東京会場|
    日時:2017年7月2日(日)(12:30開場)13:00開始 17:00終了
    会場:東京大学本郷キャンパス 福武ラーニングシアター(福武ホールB2)
    講演:『イスラエルにとってのパレスチナ占領―1967年から2017年の変化』  アヴィ・シュライム
        『パレスチナにとって占領されることの意味』  ハリール・ナハレ
    主催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

  • |大阪会場|
    日時:2017年7月5日(水)(18:15開場)18:30開始 21:20終了
    会場:大阪ドーンセンター4階 大会議室1
    講演:『「中東和平」は何処へ? ~パレスチナ社会の再建に向けて』 ハリール・ナハレ
    主催:パレスチナの平和を考える会
    共催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業), 関西パレスチナ研究会

  • |京都会場|
    日時:2017年7月6日(木)18:30-21:00(開場18:15)
    会場:吉田南キャンパス、総合館 南棟地下 共南01教室
    講演:『パレスチナ占領はイスラエル社会に何をもたらしたか』 アヴィ・シュライム
       (聞き手:岡真理)
    主催:京都大学大学院 人間・環境学研究科 岡真理研究室
    共催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

  • |広島会場|
    日時:2017年7月9日(日)(13:30開場)14:00開始 17:00終了
    会場:「ひと・まちプラザ」マルチメディアスタジオ
    講演:『英国とパレスチナ:バルフォア宣言から現在まで』 アヴィ・シュライム 
        『個人目線から語る占領』 ハリール・ナハレ
    主催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
         (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)
    共催:広島-中東ネットワーク
       科研費基盤B「中東・ヨーロッパ諸国間の国際政策協調と移民/難民の移動
       に関する研究」(研究代表者:錦田愛子、課題番号17H04504)

詳細は、シンポジウム用特設サイトをご覧ください。

報告

東京会場

アヴィ・シュライム氏「イスラエルにとってのパレスチナ占領:1967年から2017年の変化」


 アヴィ・シュライム氏による報告は、占領者となったことでイスラエル社会が被った影響を、歴史的な経過を追って指摘する示唆に富むものであった。まず、報告の内容について要約し、最後に私見を述べたい。
冒頭では、1967年の「六日間戦争」(第三次中東戦争)が、シュライム氏自身によっても個人的なトラウマであったことが紹介された。氏の言葉を借りれば、イスラエル軍は「イスラエル国防軍」(Israel Defense Force)から、「野蛮な植民地主義勢力」(Brutal Colonial Power)へと豹変した。ただし、その後のイスラエル政治を特徴付けるかに見えた「拡張主義」(expansionism)は、「六日間戦争」の動機ではなく、戦争の結果であったと指摘する。イスラエルが関与した戦争には、第一次中東戦争(1948年)のように選択の余地なく行われたものと、第二次中東戦争(1956年)やレバノン戦争(1982年)のように、イスラエルが自ら選択した戦争が存在する。そのなかで、1967年の「六日間戦争」は、その両者の性格を併せ持ち、また中東地域の紛争において、大きな転換点となった出来事であった。シリアとエジプトに対しては、政治的譲歩を引き出すことが叶えば、占領したゴラン高原とシナイ半島をそれぞれに返還する選択肢が当初から存在した。一方で、西岸地区とガザ地区の扱いが政権内部でも議論の焦点となった。1977年にイスラエルに成立したリクード政権は、ジュネーブ第四条約に照らして違法な民間人入植地を地域全体に広げることで、支配の既成事実化を進める。1978年のエジプトとのキャンプ・デーヴィッド同意においても、西岸地区とガザ地区の扱いは変化しなかった。
 シュライム氏は、自著のタイトルにもなっているウラディミール・ジャボティンスキーの「鉄の壁」(iron wall)の論理を、①壁の後ろにユダヤ人国家を確立し、②周辺国がこのユダヤ人国家の存在に異議を唱えなくなった段階で譲歩を引き出すために交渉を行う、という二段階で紹介した。そして、この第二段階にイスラエルの歴史上はじめて臨んだ首相が、イツハク・ラビンであったと指摘する。すなわち、ラビンによるオスロ合意の締結と、重要事項(入植地の処遇、エルサレムの帰属、国境の画定など)の棚上げである。オスロ合意後の和平交渉は2000年に崩壊するが、シュライム氏は、自身の見解として「入植地」が和平崩壊の第一の要因であると述べた。そして、2006年のパレスチナ議会選挙におけるハマース躍進に対する反応と、2008年から3回にわたったガザ地区に対する攻撃によって、現状のイスラエル政府は、史上もっとも右派的で人種主義的なものとなっていると非難を隠さない。
最後にシュライム氏は、占領によってイスラエル社会が被った影響はあらゆるレベルで否定的なものであると述べて、議論を総括した。すなわち、非積極的な意味でのナショナリズムの深刻化、人種主義的な態度の蔓延、治安産業の拡大(イスラエルで見られるアラビア語学習熱と、アラビア語学習者による治安産業への就職)、イスラエル国会(クネセト)での入植地に対する過度な優遇などである。こうした課題に対して、イスラエル国内では労働党(野党)の右傾化もあって、変化が実現されるとは考えにくく、現状に変化が訪れるとしたら外部からであろうと指摘し、「こうした悲観的な見方で議論を締めくくるのは残念だ」と述べて報告を終えた。
 以下は私見であるが、現代イスラエル社会が抱える問題を、この50年間の歴史的な経過から浮かび上がらせるシュライム氏の議論は精緻であり、一方で結語では自身の見解を隠さずに述べる点に、研究者としてのシュライム氏の誠実さが表れていると感じられた。シュライム氏は、イスラエルで兵役についた経験を持つ一方で、そのイスラエル社会を批判する視点を持ち合わせるなど、対象との「間の取り方」に優れた特徴を見せる。特に、イスラエルの建国に関わる1948年当時の歴史や、ヨルダンとイスラエルの秘密交渉などに関するシュライム氏の研究は、パレスチナ/イスラエル研究を専門としない者でも、歴史的な視座の置き方、対象との距離の取り方について、深い示唆を与えてくれることだろう。シュライム氏は、日本語で出版された自著『鉄の壁』(ハードカバー・2冊本)の読者に向けて、こうも言っている。「ご購入頂いた皆さまに心からお願いがあります。・・・足を怪我しますから、決して本棚から落とさないでください!」。シュライム氏の絶妙な「間の取り方」はジョークにも一役買っているようであり、会場は大きな笑いに包まれた。

(文責:鈴木啓之・日本学術振興会特別研究員PD)



広島会場

2017年[バルフォア宣言100年、占領50年]に、パレスチナ/イスラエルの過去と現在を考える


 アヴィ・シュライム (Prof. Avi Shlaim)氏は『英国とパレスチナ:バルフォア宣言から現在まで』("Britain and Palestine: From Balfour to the Present")という演題で、パレスチナ問題に対する英国政府の対応とイスラエルによるパレスチナ占領の不合理について語った。バルフォア宣言とは、ユダヤ人の民族郷土をパレスチナに建設することに対する英国の賛意表明である。「バルフォア宣言当時、パレスチナ住民の90%はアラブだった。シオニストが2000年以上も前の話を持ち出して民族郷土建設を進めていったことは、国際法に照らせば明らかに違反だ」とシュライム氏は聴衆にわかりやすく説明を行なった。
 さらに、シュライム氏はバルフォア宣言に「『パレスチナに住む非ユダヤ人コミュニティ(the non-Jewish communities in Palestine)』の市民権、宗教的権利を害さないこと」という内容が併記されていたことにも言及し、英国政府はパレスチナ人のこれまでの受難に対して責任を微塵にも感じておらず、為政者のなかに植民地主義的な考えが今なお根深く存在していることを厳しく指摘した。2017年4月にシュライム氏を含む1万人もの人々がバルフォア宣言に対する謝罪を英国政府に要求した際にも、同政府は「謝罪するつもりはない」との返答を寄せ、そのなかに『パレスチナに住む非ユダヤ人』というアパルトヘイト的表現が再び認められたという。
 ハリール・ナハレ氏(Dr. Khalil Nakhleh)は、『個人目線から語る占領:進行する土地支配』("My Personal Narrative of Occupation: The Ongoing Control of the Land")というテーマで講演された。講演の中心は、故郷であるガラリヤ地方北部のアッラーメ村をイスラエル軍に占拠されたナハレ氏の幼少期の体験である。オスマン帝国時代よりアッラーメ村の人々は宗教、宗派関係なく平和に共存していたが、イスラエル軍が1948年10月に行ったヒーラーム作戦によって状況は一変した。ナハレ氏の生家はイスラエル兵に占拠され、父、身重の母、そして5人の子供たちは強制退去を余儀なくされた。その日以降、アッラーメ村はイスラエルから軍事統治され、自らのリーダーを選ぶ権利を奪われ、監視や移動の制限など不当な行為を受けており、その苦難は今日まで続いている。
 ナハレ氏は講演の冒頭で、ユダヤ人とパレスチナには「論争的」な歴史やナラティブ(説話)があり、それらはそれぞれの立場にとって等しく正統性を持つものであると語った。ゆえに、イスラエル・パレスチナ紛争の起源について、「論争的」な歴史やナラティブによって導出すれば行き詰まってしまうという。ナハレ氏は、パレスチナ問題に対して正義の実現と倫理的な修正が実行されるその日まで、ナクバ(大災厄)を経験した自身の体験を記録し伝え続けていくと聴衆に語った。
 質疑応答では「パレスチナはなぜユダヤ人にとって約束の地なのか」という素朴な疑問から、パレスチナ問題を解決するために二国解決を支持するのかということについて、シュライム氏にさらなる説明を求める声があった。ひとしきり質疑が終わった ところで、ナハレ氏から「なぜ、日本人はプロ・シオニスト政権である安倍政権を支持するのか」というストレートな質問がフロアに対して投げかけられた。フロアからは「日本人はパレスチナ問題に対してあまりに無知だから」「今の東アジアの安全保障状況を考えると、米国に追随する以外の方法がないから」などと、広島市民という視点ではなく、あくまで日本国民という立場から答える市民の姿が印象的であった。

(文責:田中友紀・九州大学比較社会文化学府博士課程後期) 

2017年度第1回 関西パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2017年6月3日(土) 13:00~18:00
  • 会場:京都大学総合研究2号館(旧・工学部 4号館)4階 AA401(34番の建物)

  • ■プログラム
    13:00~15:00:研究報告 天野優(同志社大学大学院神学研究科・学振特別研究員DC)
                タイトル:「『アラブ系ユダヤ人』をめぐる諸言説および研究動向(仮)     

  • 15:10~17:10:調査報告① 役重善洋(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員)
               タイトル:「アメリカにおけるパレスチナ問題認識の現状」
               調査報告② 金城美幸(日本学術振興会)
               タイトル:「ナクバ/イスラエル建国史のアーカイブ比較」


  • ■主催:関西パレスチナ研究会
       (http://kansai-palestinestudies.blogspot.jp/)
    ■共催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
        (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

報告

2017年度第2回 パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2017年6月11日(日)14:00-19:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス・東洋文化研究所 3階第一会議室

  • ◆報告1:山本健介(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科[五年一貫制博士課程]、
                 日本学術振興会特別研究員[DC]
          「ユダヤ・イスラームの聖なる都市をめぐる紛争とパレスチナ人の抵抗:オスロ合意以降の
           エルサレム/クドゥスとヘブロン/ハリールを事例に」

  • ◆報告2:戸澤典子(東京大学総合文化研究科修士課程)
          「イスラエル入植政策に関わる政治領域における言説分析1980ー2013」(仮)


  • 主催:東京外国語大学アジア・アフリカ研究所 中東イスラーム研究拠点
       (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)
    共催:東京大学東洋文化研究所班研究「中東の社会変容と思想運動」

報告

報告1:山本健介(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程、
          日本学術振興会特別研究員)
     
「ユダヤ・イスラームの聖なる都市をめぐる紛争とパレスチナ人の抵抗
        ――オスロ合意以降のエルサレム/クドゥスとヘブロン/ハリールを事例に――」

 
  山本氏の報告は、エルサレムとヘブロンというパレスチナにおける二つの聖地をめぐる紛争がどのように展開され、その紛争において、パレスチナ人がいかなる抵抗を実践しているかを明らかにするものであった。
 聖なる都市をめぐる紛争に関する先行研究は、「言説上の競合」(その空間における諸権利や宗教理念、思想、イデオロギー対立)や「占領システム」、「イスラエル側の動向」に視点が偏っており、パレスチナ人の視点に注目した研究が「不在」であるという課題を抱えている。したがって、パレスチナ人による抵抗に注目することで、聖なる都市をめぐる都市をめぐる紛争をバランスのとれた形で理解できるようにすることが必要であると提唱された。
 こうした見地から、エルサレムとヘブロンという二つの聖都の結びつきと政治性・抵抗運動の性質の差異について報告がなされた。まず、二つの聖都の結びつきとして、以下の三つの構造的類似点が挙げられた。すなわち、①都市部における入植地の存在、②イスラエル支配の浸透、そして③イスラエル軍による管理の強化である。一方で、両都市における運動は、抵抗運動におけるアクターや運動の役割・性質が異なると指摘がなされた。エルサレム側のアクターがイスラエル領内のイスラーム運動のほか、欧米の援助機関であり、エルサレムにおけるアラブ系住民の生活向上や平等な権利の獲得を目的とした「政治的な」運動が展開されているのに対し、ヘブロン側のアクターはパレスチナ暫定自治政府(PA)系の組織で、あくまで「自治的な」運動に留まっており、1997年のヘブロン合意を打開していくような「政治的な」運動が展開されておらず、『「動」のエルサレムと「静」のヘブロン」という言葉を使い、両都市における運動の対称性が示された。
 質疑においては、エルサレムに対してヘブロンは比較対象として成り立つのかという指摘が目立った。エルサレム側においてはイスラエル・アラブが主体であるのに対し、ヘブロン側の主体はPA系の組織であり、主体が大きく異なることで同列に考えることが難しいほか、日常における抵抗が主題であるにもかかわらず、個人レベルの抵抗ではなく、集団によって展開される運動に注目している点も問題点として挙げられた。このほか、研究の背景の部分でヘブロンに関する記述が不在であることから、ヘブロンの政治性が顕在化されてこなかった理由の再検討が今後の研究の前提として必要であると指摘されるなど、研究の本質部分を中心とした、活発な議論が展開された。

(文責: 木全隼矢 一橋大学大学院修士課程)
 
 
  報告2:戸澤典子(東京大学大学院 総合文化研究科 修士課程)
      「イスラエル入植政策:1980-現在に続く
        ―イエッシャ評議会の政治的影響力とユダヤ人社会を考察―」


  戸澤典子氏の報告は、宗教シオニストの急進的入植者運動のグーシュ・エムニーム運動を母体とするイエッシャ評議会が入植政策に政治的影響力を与えるシステムを担保できた、その理由を探ることを試みるものである。イエッシャ評議会とは、1980年に設立され、入植者の利益確保と団結を目指すことを建前としたが、実際は政治領域への影響力強化と入植拡大にとって必要な世俗入植者の増加を目標とした半官半民の団体であった。具体的に、この団体は、政治介入する為に、グーシュ・エムニーム運動の傘下に設置されず、各地方自治体、地方議会、地区議会の翼下に置かれた。また、議会へのロビーイング、中央政府、関係省庁、世界シオニスト機構、ユダヤ基金と接触しながら、そしてグーシュ・エムニーム運動と携わる入植者を地方議会、地区議会の議員にすることで、政治的・経済的な利権を確保しながら、入植地拡大に向けての行動をとってきた。
 報告者は、イエッシャ評議会の活動地点といえる、市議会、地方議会、地区議会に着目をしながら、イエッシャ評議会のその政治的影響力を分析することを明らかにした。そして、イエッシャ評議会や宗教ナショナリストグループが政治領域へ一方的に影響を与えてきたといった内容を扱った先行研究を参考としながら、報告者は、仮説として、政治領域でイエッシャ評議会の政治的影響力を構築するシステムを支えた要因を2つ挙げた。
 一つ目は、イスラエルの左派・右派政権に限らず大イスラエル主義を唱える世俗ナショナリストにとって、イエッシャ評議会の母体であるグーシュ・エムニーム運動のイデオロギー(シオニズム的)は受容しやすいものであったために、世俗ナショナリストの協力を可能としたのではないのかと提示した。
 二つ目は、イエッシャ評議会が入植者の市民利益を代弁する団体として、同時に地方自治代表者の団体として位置することの重要性があったのではないか、つまり、市民社会と中央政府の「中間」的な役割を担っていた点から、必要とされていたのではないかと仮説を立てた。
 質疑応答では、宗教勢力の正統派と政府との関わり合いに関する議論がなされた。例を挙げると、徴兵の制度化に対して、正統派ラビの間でどのような議論があったのか、また、イエッシャ評議会がイスラエル国内でどのように認識されているのか、といった質問が挙げられ、非常に活発な議論が展開された。

(文責: 大内美咲 日本女子大学文学研究科史学専攻博士課程前期)


2017年度第1回 パレスチナ/イスラエル研究会

概要

    ラジ・スラーニ氏の来日が叶わなかったため、下記研究会は中止とさせて頂きます。
    なお、土井敏邦・パレスチナ記録の会主催の報告会にて、スカイプ通信により氏の講演が予定されています。 詳しくはこちら。

  • 日時:2017年5月17日(水)17:00-19:00
    Date: 17 May, 2017, Wed. 17:00~19:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス・東洋文化研究所 3階第一会議室
    Venue: Conference Room No.1, 3rd Floor,
         Institute for Advanced Studies on Asia, the University of Tokyo

  • 言語:英語
    Language: Enlgish

  • ■報告 ラジ・スラーニ(Raji Suourani)(弁護士、パレスチナ人権センター(Palestinian Centre
                  for Human Rights)代表)
          「ヨーロッパをめざす中東難民―レバノン・シリアのパレスチナ難民の足取りを追って―」
          (17:00~18:00)

  • ディスカッション(18:00~19:00)


  • 《ラジ・スラーニ氏略歴》
    パレスチナを代表する人権活動家。イスラエル占領下の1980年代、占領への抵抗運動で5年近く逮捕・拘留、拷問を受けた。1995年、ガザ市で「パレスチナ人権センター」を創設。 人権擁護の活動は国際的に高く評価され、様々な人権賞受賞。2013年12月には、“第二のノーベル平和賞”ともいわれるライト・ライブリフッド賞を受賞。1953年、ガザ生まれ。


主催:東京外国語大学アジア・アフリカ研究所 中東イスラーム研究拠点
   (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)
共催:土井敏邦・パレスチナ記録の会

報告