2021年度

2021年度第4回 パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2021年11月3日(水・祝)15:00~16:30
  • 会場:zoomを用いたオンライン開催
    *次のフォーム(https://forms.gle/T6PyuoMxFejyGiru5)から参加登録をお願いいたします(11月1日23:59までの登録を強く推奨)。

  •  ○倉野靖之氏(中央大学 大学院文学研究科修士課程)
     ○報告タイトル「ハーッジ・アミーンのパレスチナ観」

  •  ○概要
     英委任統治期を代表するパレスチナ人指導者ハーッジ・アミーン・フサイニーは、パレスチナ問題の展開をどのように理解していたのか。本報告では、彼の主著である『パレスチナ問題の真相』(1954年)の内容を分析し、そのパレスチナ観の特徴を明らかにする。

    ■主催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
    (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

    ■今回のオンライン研究会に関する問い合わせ先:c-hsuzuki87g.ecc.u-tokyo.ac.jp(鈴木啓之)
    ■研究会全体に関する問い合わせや報告希望の連絡先:info_palestine_israeltufs.ac.jp

報告

 

2021年度第3回 パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2021年9月20日(月・祝)16:00~17:30
  • 会場:zoomを用いたオンライン開催
    *次のフォーム(https://forms.gle/F1EcAtPkQpUDCCNG6)から参加登録をお願いいたします(9月18日23:59までの登録を強く推奨)。

  •  ○山岡陽輝氏(慶應義塾大学大学院 法学研究科修士課程)
     ○報告タイトル「2つの『憲章』から見るハマースの論理の転換」

  •  ○概要
     2017年5月に、イスラーム抵抗運動(ハマース)は「新憲章」を発表した。本報告では、この文書を1988年8月に発表されたいわゆる「ハマース憲章」と比較することで、両「憲章」間の論理の転換を指摘するとともに、ハマースの思想における柔軟性の一端を明らかにする。

    ■主催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
    (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

    ■今回のオンライン研究会に関する問い合わせ先:aikon0213keio.jp(錦田愛子)
    ■研究会全体に関する問い合わせや報告希望の連絡先:info_palestine_israeltufs.ac.jp

報告

 山岡陽輝氏(慶應義塾大学大学院法学研究科)の報告は、1988年にハマースが発表したイスラーム抵抗運動憲章(通称「ハマース憲章」、本報告では旧憲章と呼称)と2017年に同運動が新たに発表した「一般的な原則及び政策文書」(本報告では新憲章と呼称)を取り上げ、 両者のあいだにある思想的な差異について分析するものだった。まず山岡氏は、旧憲章の要諦を解説し、ムスリム同胞団との強い結びつきや、ジハード、ワクフといったイスラーム的言辞の多用などを主な特徴として確認した。そして先行研究に依拠しつつ、旧憲章自体に思想 的な柔軟性を見出すことができると指摘した上で、2017年の新憲章においては、より直接的に穏健なメッセージが発出されていると述べた。例えば、ハマースの主張を根拠付けるものとして国際法や人権といったイスラーム法体系以外の理念が持ち出されていることや、ジハード、 ワクフなどの語彙やクルアーンからの引用が全体として減少していること、さらに、旧憲章のなかでもイスラエルや欧米諸国から特に問題視された反ユダヤ主義的な主張が削られたこと、などを具体的に取り上げた。山岡氏は、本報告があくまでも新旧憲章の論理面のみに特化した 考察であることを断った上で、新憲章からは、変わりゆく国際情勢のなかで自身の柔軟性を前面に押し出そうとするハマースの意図を見出すことができると結論づけた。
 報告後の質疑応答では、新旧憲章が書き上げられる経緯の違いや、新憲章発表の背景をなすハマースの情勢認識などについて活発な議論が交わされた。本報告でのイスラーム思想的な検討に加えて、ハマースの組織戦略の側面を視野に収めた研究の発展が期待される。

文責:山本健介(静岡県立大学)

2021年度第2回 パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2021年8月1日(日)14:00~16:00
  • 会場:zoomを用いたオンライン開催
    *次のフォーム(https://forms.gle/CcaCkVZhniwbRknc7)から参加登録をお願いいたします(7月30日23:59までの登録を強く推奨)。

  •  ○報告者:田浪亜央江氏(広島市立大学)
     ○報告タイトル「パレスチナのパフォーミングアートと〈越境〉:西岸のダブケと48年アラブの劇団を中心に」

  •  ○概要
     時間・場所・身体を拘束することから社会の状況や課題が反映されやすいというパフォーミングアートの特性は、一九七〇年代以降のパレスチナにおいてとりわけ顕著である。本発表では、抵抗、文化復興、「紛争管理」といった要請にパレスチナの担い手がいかに応答してきたかを〈越境〉をキーワードに検討し、地域研究とアート研究をつなぐ方向性を示したい。

    ■主催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
    (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

    ■今回のオンライン研究会に関する問い合わせ先:c-hsuzuki87g.ecc.u-tokyo.ac.jp(鈴木啓之)
    ■研究会全体に関する問い合わせや報告希望の連絡先:info_palestine_israeltufs.ac.jp

報告

 田浪亜央江氏の報告は、パフォーミングアートが日常に根差した文化から、シオニズムに対する越境する対抗言説へと変化していったことについて議論するものだった。
 タブケが1960年代からパレスチナの文化として復興/発明されていくなかで、タブケのフォークロア収集、そして新しいタブケ作品の創出といった歴史的変遷が示された。 「エル・フヌーン」の活動の紹介を通じ、タブケがディアスポラ・パレスチナ人とのつながりを作り出すこと、また「時間内時間」概念のハレの日を創出することによる現状の占領 を仮の時間とすることといった機能が指摘された。同様に、イスラエル領内の演劇劇場での48年アラブの活動を紹介することで、パフォーミングアートが果たすさらなる可能性を示唆した。
 質疑応答では作品のオーディエンスに関する質問や、政治性を避けることの意味、「時間」概念が他のパフォーミングアート全体に適用できるのか、タブケのナショナルな属性が パレスチナ外に広がる余地があるのか、またアートと「空間」の関係についての質問など非常に活発な議論がなされた。

文責:澤口右樹(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)

2021年度 関西パレスチナ研究会連続セミナー

概要

    趣旨
     2021年4月から5月にかけて、エルサレムやガザ地区、イスラエル国内の諸都市で、パレスチナ人とユダヤ人の対立が急速に激化しました。これに際して関西パレスチナ研究会は、日本社会と日本政府に宛てた声明と要請書を発表し、パレスチナ問題の正確な理解と当事者への働きかけを呼びかけてきました。(声明・要請書はこちら)。
     上記を踏まえ、関西パレスチナ研究会では、日本国内外の研究者、政府関係者、一般市民がパレスチナ問題への理解をさらに深めるための機会を提供したいと考え、海外のゲストを招聘し、以下の通り連続セミナーを開催致します。なお、講演は英語で行われますが、日英の逐次通訳が付きます。

  • |第1回|2021年7月1日(木)18:00~21:00

    テーマ 「ガザ地区における国際援助と女性の権利」
        (International Aid and Women's Rights in Gaza Strip)
    講演 イヤース・サリーム(Dr. Iyas Salim)(同志社大学・研究員/日本在住)
    "Global" Palestine: Official Aid, Globalized Empire and the Response of Palestinian Diaspora
       ヌール・サッカー(Nour al-Saqqa)(アーティスト、映画学科・学生/ガザ在住)
    Gaza's Aftermath
    司会 役重善洋(大阪経済法科大学)
    解説 今野泰三(中京大学)
    通訳 佐藤愛(通訳者・翻訳者)
    参加申し込みはこちらから


  • |第2回|2021年7月17日(土)18:00~20:00

    テーマ 「国際法から見るエルサレム問題」
        (Jerusalem and International Law)
    講演 ムニール・ヌセイバ(Dr. Munir Nuseibah)(アル゠クドゥス大学・助教授/エルサレム在住)
    司会 松野明久(大阪大学)
    解説 山本健介(静岡県立大学)
    通訳 高橋宗瑠(大阪女学院大学)、今野泰三(中京大学)
    参加申し込みはこちらから

  • 主催 関西パレスチナ研究会
       palestine.kansaigmail.com
    共催 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
    中東イスラーム研究拠点 (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

報告

第1回「ガザ地区における国際援助と女性の権利」
 セミナーでは、まず今野泰三氏によるガザ地区の基本解説がなされた後に、パレスチナの現状について国際援助のもたらす影響や女性の社会的権利といった視点から、ガザ出身の2名の話者が講演を行った。
 イヤース・サリーム氏は、パレスチナに対する今日の国際援助が「グローバル化された帝国」の文脈で行われており、そこではパレスチナ問題の解決ではなく現状維持が優先されてきたと指摘する。この「帝国」とは、米国とその支援を受けるイスラエルや権威主義体制、軍需産業や主流メディアに代表される資本と企業、そして諸外国政府による公的援助などが絡み合い、広範に形成するシステムを指す。これらを転換し、解放に向かうためには、同じくグローバルな応答が必要である。Black Lives Matter (BLM)、先住民族、女性の権利運動など、各地で抑圧に抵抗し、平等と公正を求める動きとの連帯がますます重要になっていると述べた。
 ヌール・サッカー氏は、イスラエルによる占領とパレスチナ社会の家父長制との交差を背景に、パレスチナ人女性のこれまでの歩みや、若い世代による新たな動きを紹介した。2018年春にガザで起きた「帰還の大行進」は、週ごとに女性の参加者も増え、若い世代が行動の主体性を取り戻すきっかけになったと指摘する。最近では、性被害や暴力について匿名で話し合えるグループがSNSを中心に発足し、これまでのタブーが破られつつあるという。また、植民地主義や人種差別、国家暴力など共通の問題と対峙するBLM運動との連帯や、具体的な取り組みとしてのBDS(ボイコット、資本引揚げ、制裁)運動についても説明した。
 質疑では、パレスチナにおける女性運動の広がりや、最近のパレスチナ自治政府に対する抗議行動のほか、オスロ合意以降の日本を含めた援助の在り方についても問題提起がなされ、濃密で貴重な学びの機会となった。

文責:南部真喜子(東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程)

記録動画



第2回「国際法から見るエルサレム問題」
 司会の松野明久氏がセミナーの趣旨を説明し、山本健介氏がエルサレム問題の基本解説をした後、エルサレム在住のムニール・ヌサイバ氏が、エルサレムのパレスチナ人が置かれた現状について、イスラエルによる民族浄化、人口操作、植民地化という観点から講演を行った。 講演の概要は以下の通りである。
 1947年から1948年にかけて、シオニストたちはパレスチナ全域で民族浄化を実行し、その後も現在まで強制追放、家族統合の制限、差別的な都市計画などを通じてエルサレムの住民構成を変えてきた。 イスラエルは東エルサレムを国際法に反して併合し、パレスチナ人に「永住権」を与えたが、その地位も容易に取り上げることができる。 東エルサレムのパレスチナ人がヨルダン川西岸地区やガザ地区の住民と結婚した場合、配偶者は更新が必要な滞在権しか得られない。 両親の1人がヨルダン川西岸地区、ガザ地区、あるいは外国籍の場合、エルサレムに生まれても永住権を得られず、いかなる法的地位もない状態に置かれる場合がある(インフォグラフィック)。
 質疑では、国際刑事裁判所と日本政府に期待される役割や、パレスチナ人にとって望ましい統治形態などについて問題提起がなされ、濃密で貴重な学びの機会となった。

文責:今野泰三(中京大学)

記録動画

2021年度第1回 パレスチナ/イスラエル研究会

概要

  • 日時:2021年6月6日(日)14:00~16:00
  • 会場:zoomを用いたオンライン開催
    *次のフォーム(https://forms.gle/5uQYDUE47zfkZG9t8)から参加登録をお願いいたします(6月4日23:59までの登録を強く推奨)。

  •  〇報告者:役重善洋氏(大阪経済法科大学)
     〇報告タイトル「パレスチナ問題をめぐる地政学的変化とキリスト教シオニズム」

  •  〇概要
     米国におけるイスラエル・ロビー最大の基盤とされてきた福音派プロテスタントの内部に
     おいて、近年、若年層における「イスラエル離れ」の傾向が指摘されている。他方、非欧米諸国では、プロテスタントのコミュニティにおいてキリスト教シオニズムの浸透が目立つようになってきている。本報告ではこれらの動向の分析を通じて、パレスチナ問題認識のグローバルな変動について考察する。

  • ■主催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 中東イスラーム研究拠点
    (人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)

    ■今回のオンライン研究会に関する問い合わせ先:c-hsuzuki87g.ecc.u-tokyo.ac.jp(鈴木啓之)
    ■研究会全体に関する問い合わせや報告希望の連絡先:info_palestine_israeltufs.ac.jp

報告

 役重善洋氏(大阪経済法科大学)による報告は、キリスト教シオニズムの性質を振り返り、その歴史的展開やパレスチナ問題の現状との連関、さらに批判的議論について俯瞰するものであった。
 キリスト教シオニズムを「現在のイスラエル・パレスチナを構成する地理的領域に対するユダヤ人の支配を促進ないし維持するために、特にキリスト教徒の関与によって起こされる政治的行動」とする定義を紹介しつつ、その本質的特徴として①ユダヤ人/異邦人という二分的世界観、②終末論の影響、③欧米中心主義・イスラモフォビアの影響、④宗教ナショナリズム的・例外主義的性質、⑤中東における覇権外交との連動といった点を挙げた。
 そのうえで役重氏は、16世紀から現在に至るキリスト教シオニズムの歴史的展開についてまとめた。主に英・米にて、ディスペンセーション主義に基づきユダヤ人帰還論を支持する神学が、国家の政治的野心とも接続しながら発展し、親シオニズム的政策やロビー団体の設立に結実してきた。日本やアジア諸国でも複数の団体・国際会議がこうしたキリスト教シオニズムを継承・展開している。
 こうした動きに対し、キリスト教世界の内部からも批判が生じた。在パレスチナのキリスト教各教派や、米プロテスタント主流派諸教会をはじめ、近年では福音派の中からも神学理解を異にする動き、さらにはアジア諸国のキリスト教団体等からの批判も散見される。役重氏はこうした批判的な立場がネットワークを構築しつつあり、イスラエル側がキリスト教シオニズムを利用する状況への対抗軸として位置づけ得ることを示唆した。
 質疑応答では、キリスト教シオニズムの現状と、昨今の米世論や政策における変化との関係性を中心に、活発な議論がなされた。根強い支持基盤の存在や、神学的・構造的変化は簡単には起こらないことが示唆されつつも、複数の観点から変革の兆候が見られること等も指摘された。

文責:ハディ ハーニ(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教)