Israel: metropolitan integration or 'fractured regions'? An alternative perspective
本論考はIra Sharkansky “Israel: a metropolitan nation-state”(Cities, Vol. 14, No. 6, pp. 363-369, 1997)への批判論文である。
Sharkanskyは、巨大都市圏が出現してイスラエルが「都市国民国家」となり、応答力・説明責任・民主主義・都市圏連携をもつ統治システムが実現されていると論じ、地方分権改革の必要性を否定した。
これに対して著者は、イスラエルで中央集権が実現・維持されてきたのは、社会エスニック集団を分断・周辺化する国家政策と、国家とアシュケナジー・エリートの独占を維持する植民政策に起因すると反論し、社会エスニック集団の分断と差別を解消する環境作りを進めるべきと提案する。本論考は、イスラエルにおける空間的な不均等発展や都市圏拡大と、エスニシティー・国家権力の関係に関心のある読者にお薦めの論文である。(今野泰三)