(マジョリティの時間、マイノリティの時間:イスラエルにおける土地、ナショナリティと所有権の時効取得)זמן של רוב, זמן של מיעוט: קרקע, לאום, ודיני התיישנות הרוכשת בישראל

イスラエルの時効法(1958)におけるオスマン土地法第78条(ミーリー地(国有分配地)の時効取得について)の解釈をめぐる問題について、1950年代の裁判記録等への詳細な分析から論じた著作。イスラエルの法、裁判所の判決が近代主義的な「客観性」に基づきオスマン法、イギリス委任統治政府の法令を解釈してきたというそれまでイスラエル国内で主流だった議論に対して、その法解釈の中にシオニストの恣意性や民族主義的イデオロギーがいかに反映され、土地の保有権(所有権)の承認過程においてどのように「ユダヤ人」と「パレスチナ人」の間での格差を生み出されていったかということについて実証的に明らかにしようとした論文。

土地問題に関するものなど複数の他の論文集にも所収されるなど、法学研究以外の場でも広く引用されているエポックメイキングな論文。著者は、土地法を専門とする法学者である一方、現在のパレスチナ人の土地接収問題を含む多くの土地問題に関する運動や最高裁への提訴に関わっている人物でもある。(吉年誠)