蘇るパレスチナ:語りはじめた難民たちの証言

ムスリム、キリスト教徒、ユダヤ人の平和な関係が、シオニズムの急進化により壊され、「アラブ人とユダヤ人」という構図に書き換えられていく様子が描かれている。政治学的な視点を採用する研究が多いなかで、本書は人々の視点からパレスチナ難民の経験を再構成する点に特徴がある。例えば、アラファートに次ぐファタハの要人だったサラーフ・ハラフの自伝や証言が取り上げられ、特にナクバ前後からPLO結成いたる、平和から緊張への変遷が個人の目線で記されている。終盤ではベイルート、サブラ・シャティーラ難民キャンプでの虐殺(1982年)にいたる、パレスチナ難民のレバノンでの位置づけとその様子が描かれる。(鶴見太郎)