Being Israeli

新制度論をグローバリゼーション化における各国の移民編入政策への分析に取り込んだヤスミン・ソイサルの議論を、イスラエル社会のメンバーシップにおける「包摂」と「排除」の論理への分析に適応しようとした著作。イスラエルの市民権の性格を単に「ユダヤ的」なものと見なすのではなく、「自由主義」「共和主義」「民族主義」という3つの異なる言説の社会的ダイナミズムの中で動態的に説明しようとしている点で画期的な視点を提示している。その内容は、膨大な情報を用いてイスラエルにおける社会変動について包括的に概観したものとなっている。一方で、その議論は、本著の中で著者自身も述べているように、2000年の第二次インティファーダ以前のイスラエル社会にあったネオリベラリズムの広がりや「和平」に対するある種の「楽観論」を反映している。2005年にはヘブライ語訳が出版されている。(吉年誠)