Ethnocracy: Land, and the Politics of Identity Israel/Palestine

本著の特徴は、イスラエルとパレスチナを一つの構造分析の中に捉え、その地理・政治・文化・社会・経済的ダイナミクスを、「エスノクラシー(Ethnocracy)」という概念で総合的に分析する点にある。エスノクラシーとは、民主主義の装いをもちながらも、係争領土における特定のエスノ・ネーションの拡大・独占・支配を確立することを目的とした政体を意味する。著者は、ネオ・グラムシ主義と物質主義のアプローチを採用し、エスノクラシー政体の形成・変容を「移民入植社会」、「エスノ・ナリョナリズム」、「資本の民族主義的なロジック」という3つの要素の相互作用として考察する。

本著は、ローカルなスケールも分析対象に含めており、イスラ エル/パレスチナにおいて差別や差異がいかにして構造化され、不均衡発展や分離・隔離を形成してきたか分かりやすく示している。

著者は、ベングリオン・ネゲヴ大学地理学科の政治地理学者。(今野泰三)