Identity and Religion in Palestine: The Struggle between Islamism and Secularism in the Occupied Territories

パレスチナ被占領地における丹念な現地調査を元に執筆された本文献は、「世俗派」と「宗教派」という二項対立的理解に疑問を呈す素材を提供し得る。特にファタハ支持者を事例とした箇所で言及される「イスラーム主義なきイスラーム」という著者の提議は興味深く、「イスラーム復興」や「宗教」とアイデンティティーの関連性など、多くの研究分野で参照価値は高い。なお、調査サンプルの面ではsmall-Nとの批判を免れ得ず、文献の構造として「世俗派」と「宗教派」という二項対立的理解を完全に乗り越えているとは言えない。(鈴木啓之)