International Assistance to the Palestinians after Oslo: Political guilt, wasted money

本書は、1993年に締結されたオスロ合意以降、国際連合や世界銀行の主導で形成された国際援助体制がパレスチナ/イスラエル問題に及ぼす影響に焦点を当てた研究である。ここでは、1993年のオスロ合意によって始まった和平プロセス、2000年に勃発したインティファーダ、そして2006年のパレスチナの評議会選挙でハマースが勝利を治めるに至る変遷の中で、国際援助がどのように展開されてきたのかという考察をイスラエルの占領政策、パレスチナ自治政府の腐敗、援助ドナー間の競争関係という3つの側面から試みる。

本書に見られる重要な主張として挙げられるのは、オスロ合意以降パレスチナ自治政府が権威主義と官僚主義によってイスラエルの占領に都合のよい組織へと仕立て上げられたこと、現地社会において援助が占領の固定化とそれによるパレスチナの分断を助長したという点であり、それらを国際機関職員に対するインタビューを多様に織り込んで記述する。著者は、国際援助がパレスチナ/イスラエル問題の政治、社会的展開に受動的に対応してきただけでなく、むしろその展開に能動的な関与をもつことを示している。(塩塚祐太)