Jordanians, Palestinians, and the Hashemite Kingdom in the Middle East Peace Process
著者はナーブルス出身のパレスチナ系ヨルダン人で、ヨルダンの閣僚を歴任し、フサイン国王のアドバイザーを務めた人物。
本書は、第一次世界大戦期から1990年代までのパレスチナ問題の展開とヨルダン政治のかかわりについて、ヨルダン国内におけるヨルダン人とパレスチナ人との関係、そして両者それぞれが形成してきたナショナリズムを軸に描いている。本書では、トランスヨルダン首長国時代からの住民をトランスヨルダン系、そして1950年の西岸地区の正式併合以降の以降にヨルダン国籍を得た旧委任統治領パレスチナ出身者をパレスチナ系として区分している。著者は特に、1970年のヨルダン内戦を転換点として、「ヨルダン人」としての統合が試みられてきた両者の間の分断と融和を真正面から取り上げている。そのことは、ヨルダン社会からの批判を招いた一方で、ヨルダンのナショナリズムと国民アイデンティティをめぐる問題を広く提起することになった。 (今井静)