Messianism, Zionism and Jewish Religious Radicalism (2nd Edition)

メシア主義思想におけるシオニズムの位置づけを巡る議論を体系的に整理した古典的名著。

著者は、シオニズムを巡る神学的議論はメシア主義すなわち贖いの性格や人間の役割を巡る議論と直結していると論じ、反シオニズムの論陣を張った正統派ユダヤ人とシオニズムを受け入れたラビたちの思想を考察する。ハレディーム(超正統派)のシオニズムへの反対は、離散における長年の伝統に根付いたメシア観を反映したものであり、それがシオニズムとの直接的対峙の中で先鋭化されたと論じる点が特徴的。ユダヤ文献やユダヤ人の生活で「イスラエルの地」の引きつける力とはねつける力の間で緊張関係が見られ、それが定住命令と離散命令としてユダヤ法に反映されたと指摘し、その中でシオニズムを巡る議論を捉えている点も興味深い。

著者はすでに亡くなったが、長年エルサレム・ヘブライ大学人文学部ユダヤ思想学科で教授を務めた。(今野泰三)