Nationalism and Its Alternatives in the International Arena: The Jewish Question at Paris, 1919

本論文は、第一次大戦後、パリ講和会議において大きな議論となったマイノリティ問題とこの議論の進展に貢献した欧米ユダヤ教徒諸代表団の外交を扱ったものである。

著者のLeveneは、このマイノリティ問題の議論においてなぜ欧米ユダヤ教徒の外交団が成果を上げることができたのか(なぜシオニストは成果を上げられなかったのか)、この議論が1990年代までの東欧のマイノリティ問題にどのような影響を与えたのかを論じている。また、ナチス台頭以前の英国パレスチナ委任統治政府において、シオニストたちの活動は資金獲得や移民政策において限定的な成功を得るにとどまっていたが、本論文はそうした背景にあった欧米ユダヤ教徒たちの国際的な戦後政策を考察する上でも重要な情報を提供している。

本論文で触れられている、第一次大戦期以前および戦中の英国ユダヤ教徒たちの東欧ユダヤ教徒問題に関する諸外交に関しては、Leveneの単著、War, Jews and the New Europe に詳しい。(武田祥英)