Occupied Territories: The Untold Story of Israel's Settlements

本著では、イスラエルが1967年以降、入植と占領政策を通じて「時代錯誤な植民地主義へと逆戻り」したと論られ、そこに至る政治過程が解説されている。

本著の第1の特長は、被占領地での植民地主義的支配の原因を、1967年から77年までの労働党政権下における政治過程に探っている点にある。第2の特長は、そうした支配が政府や軍によって意図されたものではなく、第三次中東戦争終結直後の戦略の欠如あるいは国家規模の選択回避に起因するものであり、戦争で突然手に入れた「成果」の「偶然」の産物だったと主張する点にある。

本著は、1967年以降の入植活動と建国以前から67年まで組織的に行われきた入植地建設や対アラブ人政策との関連性を論じておらず、67年前後に明確な戦略や合意が見受けられなかったということだけで突如偶然にイスラエルが植民地主義支配を始めたと結論づけており、その根拠ははなはだ弱い。だが、これまでの入植地研究において注目されてこなかった1967年から77年という時代に焦点を当て、様々な興味深い事実にも触れている点では、一度目を通す価値はあるように思う。(今野泰三)