Overlooking Nazareth –The Ethnography of exclusion in Galilee

テルアビブ大学のユダヤ人人類学者によるエスノグラフィーの秀作。ナザレとそれに近接するユダヤ人都市ナザレット・イリットでの都市生活について住宅、政治、教育、スポーツ、医療など幅広いテーマから論じている。本著作は、イスラエルにおける公的空間からのパレスチナ人の排除を主要な問題意識しつつも、それを都市生活におけるパレスチナ人住民とユダヤ人住民の対立ではなく、住民の境界横断的な日常的「共存」関係から論じた稀有な著作。ただし、著者が調査を行った90年代初頭までに比べ、90年代以降の旧ソ連圏からの大量の「ユダヤ人」移民の流入によりナザレット・イリットの都市風景は現在劇的に変化している。(吉年誠)