Spatial Concentration and Deconcentration of Population: Israel as a Case Study

本論考は、1948年から92年までの、イスラエルにおける人口の集中・脱集中・再集中といった現象を、国家レベルと大都市圏レベルを区別して考察した点で新しい。また、イスラエル国内の都市圏では均一的・同時代的に人口集中・脱集中が起こっておらず、規模の経済と集約から、規模の不経済と脱集約へと移行していく都市の「成熟度」の違いが人口流出入の差異を生んでいると論じている点も興味深い。

だが、イスラエル国内と占領地のパレスチナ人の移動を考察せず、個々人の移動の背景は考慮しても人口移動と政策・法律や歴史的な不均等発展の関連性は考察しないなど不十分な点も多い。以上の問題点を補足する論文として、Oren Yiftachel, “Israel: metropolitan integration or 'fractured regions'? An alternative perspective,” (Cities, 14:6, pp.371-380, 1997)を参考されたい。(今野泰三)