The Arabs in Israel
イスラエル国籍を付与されてイスラエル領内で生活するパレスチナ人(48年アラブ/イスラエル・アラブ)について、歴史的背景、社会構成とその変容、政治活動や政治意識、メディアや文化状況などを概観した書。刊行当時では48年アラブの状況について、英語で書かれたものとしてはもっとも包括的に論じた書物の一つだった(ヘブライ語では同じ著者による ערביי ישראל: בין פטיש לסדן 〈イスラエル・アラブ:板ばさみの中で〉1992、אקדמון刊 が先行)。筆者はイスラエルのアラブ事情に関してイスラエル首相顧問なども務めた「イスラエルのマイノリティ問題」の第一人者。したがって記述のトーンは一貫してイスラエルのマジョリティであるユダヤ人の立場からアラブをいかに統治するのかというスタンスである。48年アラブに関し、彼ら自身による優れた研究書も増えている現在では、事実関係を知るためというよりも、イスラエル国家がいかにアラブ人の支配のありようを正当化しようとしているのかをイスラエルの立場に沿ってそれなりに理解するために有用。アラブへの差別的処遇に対する批判に対し、法の論理の下でシオニストの立場からそれなりに誠実に答えようとしていると読むのか、いい加減なロジックを使って無理矢理正当化しようとしていると読むのかは、読者次第だろう。(田浪亜央江)