The Educational Philosophy and Curriculum of the Palestinian Nationalist Movement: From Arab Palestine to Arab-Islamic Palestine

パレスチナ自治政府の教育原理(1998年)と学校カリキュラム(2000-2006年)の分析に基づいて、パレスチナの教育がイスラーム化を強めていることを提示。それが、イスラームを民衆動員のシンボルと位置づけつつ世俗色も同時に持ち合わせていたPLO≒ファタハから、イスラームとパレスチナ・ナショナリズムを一体化して捉えるハマースへとパレスチナ政治社会が移行していくことと軌を一にしている(ファタハ主導の時期に皮肉にも教育をそのような方向にしてしまった)というのが著者の基本的論点。当地での紛争がイスラームの文脈で理解されている(そのように生徒に促す)点なども指摘。もっとも、ここでイスラームが何を意味するのか、「政教一致」のような事態をどのように考えるべきか、読者に委ねられた問いは大きい。(鶴見太郎)