The Israeli Memory Struggle: History and Identity in the Age of Globalization.

本書は、一九八〇年代以降の「ポストシオニズム」の流れのなかで生まれた「新しい歴史記述」、文学テクストやメディア表象を取り上げ、イスラエルのなかでの歴史的言説の変化を検討している。分析視点としては、ヘイドン・ホワイト(Hayden White)の歴史の物語論に大きく依拠しつつ、ポストシオニズム期、とりわけ「新しい歴史家」において起こった歴史概念の変容を浮かび上がらせている。また、思想的潮流であるポストシオニズムを、イスラエルの経済の民営化とグローバル化と関連付け、他地域におけるナショナリズムと植民地主義のパラダイムの揺らぎとの重なり合いを示唆している点も特徴的である。(金城美幸)