The PFLP’s Changing Role in the Middle East
英語で参照可能なパレスチナ解放人民戦線(PFLP)に関する数少ない研究書である。アラブ民族主義者運動(ANM)からいかにして組織が発展したのか、パレスチナ解放機構(PLO)においてどのような立場をとり、また実際に脱退や再加盟などに至ったかを細かく記述している。
ソヴィエト連邦崩壊後やハマースの台頭などの影響を受け、特に1990年代以降に著しく組織力を弱めた人民戦線ではあるが、現在においても重要なパレスチナの抵抗運動組織の一つであることに変わりはない。2000年代以降にはアブー・アリー・ムスタファー(2代目書記長)が暗殺され、ジョルジ・ハバシュ(初代書記長)が死去、また本部のシリアから西岸地区への移転、武装組織アブー・アリー・ムスタファー大隊の創設など、多くの変化を遂げつつある人民戦線の通史を理解するうえで重要な示唆を本書は与えてくれる。(鈴木啓之)