Why Secularism Fails? Secular Nationalism and Religious Revivalism in Israel

イスラエルの政治・社会・文化を理解する上で、世俗主義、宗教(ユダヤ教)、ナショナリズム(シオニズム)の関係を考察することは不可欠である。本論考は、世俗ナショナリズムとして始まったシオニズムが世俗主義には結実せず、逆に「世俗主義なき世俗化」と宗教の民族国家化」を出現させ、市民憲法主義を圧倒していった過程を考察する。

著者は、イスラエルのユダヤ教を、民主国家内のエスニックな境界線と植民活動を正当化するために用いられる「主要な政治カード」と解し、ゆえに信仰・宗教実践のレベルでは世俗化が進展しているにもかかわらず、集合的領域では世俗化が実現しなかったと論じる。これは、現代イスラエルを理解するうえで重要な指摘である。

本論考は、ユダヤ教の「内」面的な精神世界という限界を設けずに、ユダヤ教とシオニズムとイスラエルの関係の変容を社会学的・歴史学的方法論で統合的に分析した優れた論文である。(今野泰三)

 

論考の目的

 ・イスラエルにおける世俗主義・宗教・ナショナリズムの関係、特に世俗主義の失敗を考察

 60年前・・・シオニスト・ナショナリズム=伝統的・宗教的なユダヤ教共同体主義に代わる近的・世俗的な代替案を提供すると考えられた

  BUT 現在・・・ナショナリズムと宗教は密接に結びつきあっている