Zionism and Colonialism: A Comparative Approach
植民地主義およびユダヤ人移民とパレスチナ人の接触を分析の中心に据えてイスラエルの政治社会史を考察した論考。これまでのイスラエルの政治社会史は、シオニスト移民の物語とパレスチナ人とユダヤ人移民の接触の物語を別個に扱う「他者不在」の研究が多かった。本論考はそうした研究を批判し、両者を統合しようというユダヤ人研究者による試みの一つ。
本論考は特に、1967年以降の入植地建設と1948年以前のシオニストの植民の間の継続性に着目し、1967年以降のイスラエル社会の転換はヨーロッパ型の植民方法の変化として捉えるべきだと提案する。著者は、カルフォニア大学サンディエゴ校教授。
日本では、大岩川和正氏がユダヤ人の植民史としてパレスチナ地域の史的発展を論じ、他にも板垣雄三氏や藤田進氏などが植民地主義・帝国主義の問題としてシオニズムとイスラエルについて考察してきたので、そちらも参照されたい。(今野泰三)