The Jewish Bund in Russia: From its Origins to 1905

ブンド研究の古典。ポーランド分割以降のロシア帝国のユダヤ人の歴史の概観にはじまり、「ユダヤ人定住地域」におけるユダヤ人労働運動の発生、ブンドの結成を経、その運動が一つの頂点を迎える1905年革命までを扱う。指導者層の言動や大会議事を丹念に追う古典的な社会主義運動研究の手法を取る。なかでも、非ユダヤ人の社会主義組織との連携や確執のなかでブンドが「ユダヤ人」独自の党としての立場を採用するにいたる過程の記述が本書の一つの導きの糸をなしており、ロシア社会民主労働党との関係、とくに、レーニンらのちのボリシェヴィキの指導者との確執が丁寧に論じられている。また、ポーランド社会党との関係についても触れられている。(ブンドとポーランド社会主義運動の関係についてはJoshua Zimmermanが展開し、Poles, Jews and the Politics of Nationality: The Bund and the Polish Socialist Party in Late Czarist Russia, 1892–1914 [Madison, WI: Univ. Wisconsin Press, 2004]において体系的に論じている。)

序章において筆者は、本書での自身の最大の関心が大衆政党の形成過程を追うことにあると述べている。本書では上記の論点の他、「ユダヤ人定住地域」における労働運動の展開(組合の形成、ストライキなど)についても詳細に描かれている。記述は少ないが、初期ブンドのイディッシュ文化へのコミットについても触れられている。本書一冊で多くの知見が得られる目端の利いた研究である。(西村木綿)