アラブの解放

文学から歴史、政治声明、インタビュー、論考など、非常に幅広くパレスチナ問題を取り上げた書籍であり、「中東紛争」を「パレスチナ問題」として日本社会に提起した(冒頭の著者による「まえがき」に拠る)。

タウフィーク・ザイヤードやマフムード・ダルウィーシュなどの抵抗詩の翻訳を筆頭に、当時の最新情勢である「黒い九月」までを著した第一部に続き、第二部ではワリード・ハーリディーやサブリ・ジュリスなどによる研究の蓄積が訳出される。著者による冒頭の「解説年表」では、歴史的日付ごとに詳細な解説が付され、末尾の「文献案内」では当時の日本社会におけるパレスチナ問題への関心の在りようを垣間見ることができる。(鈴木啓之)