Creating Facts: Israel, Palestinians and the West Bank

1967年以降の西岸地区における、イスラエルによる入植地建設と対パレスチナ人政策の背景を考察した概説書。

本書の特徴は、被占領地において土地接収と入植地建設を通じて土地のコントロールがパレスチナ人からユダヤ人へと移され、パレスチナ人がユダヤ人に管理される賃金労働者へと転換されてきた根本原因が、イスラエル建国以前から続く「一貫したイスラエルの政策」にあると論じる点にある。この政策は、第三次中東戦争直前に発足した国家統一内閣の閣僚が、英国委任統治時代にシオニストが考案した軍事力と入植地を基盤としてユダヤ人コミュニティーを強化する「既成事実作り」の戦略を再び採用したことに起因すると著者は論じる。イスラエルにとっては外交と条約もまた、「既成事実作り」のための道具でしかないという。

イスラエルによる入植地建設は中東和平における重要な問題の一つであるが、本著はその政治的・戦略的背景を理解するうえで読まれるべき1冊である。著者は現在、米国の研究所「Foundation for Middle East Peace」の研究員。(今野泰三)