For the Land and the Lord: Jewish Fundamentalism in Israel

1967年以降にイスラエルで興隆したとされるユダヤ教原理主義について考察した学術書。

特に著者は、1967年戦争と西岸地区・ガザ地区の占領によって、イスラエル国家が、民族的誇り・親密さ・献身を特徴とする国から共同体の運命を巡って感情的に分断された国へと転換したと論じ、その分断の一翼となってきたグッシュ・エムニームとカハ運動の思想・組織および影響力拡大の背景を考察する。著者は、原理主義を「天上で定められた絶対的原理に従って、社会を根本的に転換しようとする政治行動」と定義し、その特徴として、原理的信仰と政治態度が異常なレベルで近接して直接的につながり、政治参加の仕方が非妥協的・ドグマ的・総括的であることを挙げる。

著者はイスラエル政治社会史を1967年以降とそれ以前で根源的転換を果たしたと捉え、その断絶を論じており、両時代の継続性・共通性を論じる研究者(例えば、Gershon ShafirやOren Yiftachel)はこうした立場を批判している。(今野泰三)