Jewish Bialystok and Its Diaspora

ビアリストック(ポーランド語名:ビャウィストク)は、現在はベラルーシに近いポーランドの東端にある中都市。ロシア帝国時代の20世紀初頭は、工業都市として、ユダヤ人が多数派となっていたが、西への移民も多く輩出していた。20世紀前半のユダヤ史において移民は重要なテーマであり、特にニューヨークに関するものなど、移民先の移民の状況についての研究は多いが、移民元を基軸にした移民史として本書は新しい。アメリカ、アルゼンチン、パレスチナ、オーストラリアへのビアリストックからの移民は、ユダヤ・アイデンティティだけでなく、ビアリストック出身というアイデンティティでコミュニティを形成することが多かった。それが現地の状況や他地域の同郷移民とどのように相互作用していったのかが詳細に描かれている。一例としてシオニズムとの関連で興味深いのは、自立的な「新しいユダヤ人」を目指したとされるパレスチナ移民にあって、むしろアメリカなどのビアリストック移民の援助をあてにしている面があったということである。(鶴見太郎)