Jewish Daily Life in Germany, 1618-1945

社会生活に焦点を当てた異色の通史。家族生活や日常的な宗教の実践、職業、非ユダヤ人との関係性などを、大きく4つの時期に分けて詳述している。ドイツ・ユダヤ近代史といえば、モーゼス・メンデルスゾーンを筆頭としたハスカラー(ユダヤ啓蒙主義)の役割が重視されてきたが、本書ではそれに関してほとんど記述がない。その代わり、シナゴーグの出席状況やその構成の変化に光をあてるなどしている。もっとも、従来の知性中心史観との擦り合わせをどうすべきかという疑問は残るし、19世紀後半からドイツ・ユダヤ人の間で問題となり始めたロシア・東欧ユダヤ移民の問題について記述が少ないなど、重厚な割に抜けている部分もある。(鶴見太郎)