Nakba: Palestine, 1948, and the Claims of Memory

ナクバの記憶がパレスチナ人離散社会のなかで果たす役割を、語りの困難さとの葛藤のなかに置きながら考察する論文集。トラウマ、ジェンダー、「現在」との距離、ナショナル・イメージとの間の葛藤などといった、語りを困難にする要件を浮かび上がらせるとともに、語りを通して公的なものとなった記憶が語り手や集団のアイデンティティに与える意味を検討する。同書は、パレスチナ/イスラエルの「1948年論争」のなかではもっぱら歴史学の一史料とされてきたナクバの証言を、記憶やトラウマ、オーラルヒストリーにかかわる理論を援用することで他地域との比較の視点を取り入れながら批判的考察の対象としている。(金城美幸)