Religious-Zionism: History and Ideology

宗教シオニズムの概説書。本書は、イスラエルのバール・イラン大学人文学部教授が執筆したヘブライ語文献の英訳版。

本著の特徴は、宗教シオニズムが19世紀あるいはそれ以前に始まったという見解を否定し、1902年のミズラヒ運動創設と共に宗教シオニズムが確立したと主張する点にある。著者によると、ミズラヒ運動創設こそが、宗教的なラビ世界が近代的な制度化された政治に参加した初めであり、ユダヤ教における真の革命だったという。

宗教シオニストの多くがマルクス理論に傾倒し、革命意識の表現として組織化された行動を重視し、時にラビの権威も否定したという指摘は興味深い。宗教シオニズムによって「イスラエルの地」が「天上から地上に引きずりおろされた」という指摘も、イスラエルの占領政策や原理主義的な入植運動の起源を理解する上で重要であろう。(今野泰三)