Alternative currency arrangements for a new Palestinian state
2国家分離案の円満な成立を前提とした上で、来るべきパレスチナ国家*の通貨をいかに設計すべきかを問う研究である。イギリスのヨーク大学に事務局をおくMoney macro finace research groupの2004年年次大会にて発表されたもの(http://repec.org/mmfc04/13.pdf)。
著者はまず開放経済をとる小国の通貨政策を概観する。次にパレスチナ経済から生じイスラエル銀行の懐に入るシニョレッジ(中央銀行の利子収入)がパレスチナのGNPの何%に相当するのか、また独自貨幣導入により得られるシニョレッジ収入の推計について先攻研究を紹介する。そして独立したパレスチナ国家が自由貿易体制をとるとの仮定のもと、貿易パターンの変化を推測し、EUが主な輸出入の相手となるだろうことから、独立時は主に新イスラエル・シェケルにペッグしつつも徐々にユーロをアンカーカレンシーとすることを提唱する。
*本文中におけるパレスチナとは、ヨルダン川西岸地区ならびにガザ回廊のみを指すものとする。(鈴木隆洋)